台湾漫画 「採集人的野帳(植物コレクターのノート)」


英張・作「採集人的野帳(植物コレクターのノート)」
CCC創作集編 蓋亞文化出版
2021年1月20日

1924 年、舞台は大正時代の台湾。当時は日本の植民地で、「国語」といえば、日本語、日本一高い山は台湾の玉山でした(富士山じゃないというネタよく聞きます)。

台北植物園の中に、台湾最古の植物標本館があり、台湾での植物収集の黄金時代を迎えていました。

薬草堂の放蕩息子「涼山」は、ボヤを起こして大事な植物標本を燃やして勘当され、台北植物園で助手として働いて返すことになります。

病気で妹を無くしたことで、薬草に対する不信があり、薬草の仕事を厭う一方で、幼い頃から薬草堂で培われた知識は健在。実は、一度みた植物は鑑別ができるという天性のプラントハンター(採集人)なのでした。

実際に存在していたという植物学者、佐々木舜一(作中では慎一)の助手、松尾珀と涼山がタッグで、野山に分け入り、植物を採取しては、標本を作る物語。ケシの栽培をしている人里離れた村で出会った少女が調査に加わり、賑やかになる標本館。

涼山はちょっとチャラい感じで、最初は極力サボろうとするろくな事しないやつ扱いなんですが、だんだん頭角を現していきます。対称に、鬼のように厳格な性格の助手の松尾との掛け合いも見ものです。

作者は、実際に標本館を丁寧に取材され、2年の構想期間をかけて書かれているそうです。日本植民地時代の植物学研究の日常を垣間見ることができます。

ときどきコラムで、実在する標本館のことや、標本の作り方の解説なども掲載されていて、植物好きにはうれしい漫画です。

台湾大学の植物標本館

以前、訪問した台湾大学標本館。学芸員の郭さんにご案内いただきました。日本人の名前が記された標本をみるのもなんだか不思議な感じがしました。

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漫画の中で、植物標本の作り方を教えるシーンで、キノコはどうするのか?という質問がありました。まさにこれ。ホルマリンですね。大正時代の植物がこうやってみれるのは興味深いです。

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タンスの中にも植物の種子がびっしりつまってます。ところどころにこうやって仕掛けがしてあって、手に取って鑑賞できるのがいいところですね。日本だと、手に触れられないですね。ガイドしてもらった方がこういう発見があって楽しいです。

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生活の中でひとは植物とどう向き合って来たのか、植物との関係性の歴史を学ぶことができます。

標本館以外にも、蓬莱米の研究をされていた磯栄吉の博物館があったり、見所いっぱいの台湾大学。物語の舞台は台北植物園ですが、ここも面白いです。

国立台湾大学植物標本館
10617 台北市 羅斯福路四段一號植物標本館
+886 2 3366 2463 
tai2.ntu.edu.tw

Asian Foodlore ニュースレターの第2号のテーマは「台湾の薬草文化」についてです。毎回のレターはレシピ付きです。お楽しみに〜。


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